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大河ドラマ「平清盛」を最初から見直してみた

大河ドラマ「平清盛」を最初から見直してみました。初回の放送の時は初めのうちは真剣に見ていたのですが、途中から少し「鼻につく」感じがして、あまり身を入れてみなくなった記憶があります。このところ一部の歴史好きの方から高い評価を受けていることを知り、ビデオを全話レンタルして見直してみました。

全話を見終えての率直な感想

まずは全話見終わって

①時代考証と歴史の描き方は秀逸 ですが

②清盛を中心とした人間描写が破綻していて最悪

と感じました。

私が放映当初「鼻についた」のは②の部分があまりにひどすぎて見ていられなくなったのだと思います。

清盛が若いころは「面白きことをしたい」「武士の世を作る」などと大きいことを言っていながら武芸や学問をせずに遊び歩いていて、しかも親の七光りで高い地位に最初からつくという絵にかいたような「鼻持ちならない」やつで全く感情移入できません。

後半は後半でこれも「武士の世のため」とかいっておきながら、やっているのは自分たち平家一門だけが富と権力を独占するだけで、まあ単なる「悪の権化」みたいな存在になっていて主人公として「いかがなものか」という存在になっています。

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残念なスイーツドラマと興味深い歴史ドラマが同居

これは脚本家が清盛を描くにあたって、「悪いことをしたけどそれにも意味があったのだ」という形にして主人公としての体裁を整えようとしたのでしょうが、意図とは全く反対の結果となってしまったようです。これならば祖父や父を継いで「平家一門の栄華」のために利己的に立ち回った清盛として描いた方が潔くてよかったかと思いますし、個人的には北野監督のアウトレイジのように源氏も平家も「全員悪人」としてしまった方が面白かったと思います。むしろそちらの方が歴史にも即しているのですから。

そういう描き方をしなかったのは大変残念に思います。なぜならこのドラマが歴史好きの人たちに評価されているのは①の時代考証と歴史の描き方があまりに秀逸だからです。

放映当初は「画面が汚い」「画面が暗い」と言われましたが、当時の世界が汚いのは当たり前のことで「正確な時代考証」はこの画面から始まっていたと気づかされます。

ドラマが歴史に即して進む中で、いろいろ私が感心したことがありますが、その一部を並べてみます。

・崇徳上皇方の武力は藤原氏の長者である藤原頼長の荘園をバックにした財力で賄われた。源氏は藤原摂関家の荘園の管理を請け負っている関係で上皇方に付いたことが表現されている。

・反対に後白河天皇側は鳥羽院の荘園を引き継いだ美福門院の財力がメインで、その荘園の管理を請け負っていたのは平家である。

・源義朝は為義とその子たちとはすでに対立関係にあったことを描いており、悪源太義平の大蔵合戦のシーンも挿入されている。(欲を言えば、その時に助けられて木曽に匿われたのが木曽義仲であることも説明してほしかった。そうすると源頼朝と木曽義仲が戦った理由がわかる。)

・平頼盛や平重盛が微妙な立ち位置に立たされているのは母方が違うためと表現されていた。同じように歴史において実は母系の影響がかなり大きいということを時代考証の先生は言いたかったのではないか。

・平治の乱とその後における派閥とその力関係について説明されていた。後白河法皇と二条天皇は親子とはいえ対立関係にあったことが描かれていた。

・源氏決起の原因となった以仁王は鳥羽院直系の皇子であり、鳥羽院の膨大な荘園を相続した八条院のバックアップがあった。(八条院領)つまり後白河法皇とも平家に近い高倉天皇とも違う政治派閥である二条親政派の巻き返しであった。(なお八条院領はその後には大覚寺統に引き継がれ後醍醐天皇の経済的基盤となった。その中に足利荘もありその関係から足利氏挙兵の一因になったともいわれる。)

などなど従来の歴史ドラマにはないディテールが丁寧に説明されていて、それこそがいまだにドラマ「平清盛」のファンが数多く存在している理由かと思われます。「平清盛」は歴史ドラマですので、何々はあったという歴史をなぞる場面が数多くあります。その場面がどこもこの上なく奥深くて素晴らしいのです。

それに対して主人公が出てくるシーンは若い時は「面白きことをしたい」「武士の世を作る」などと底が浅いセリフのオンパレード、この落差は何なんだと言いたくなります。時代考証担当の先生が、大河ドラマの脚本家は歴史をわかってないとご立腹だったそうですが、確かにそのとおりかもしれません。

結論:松山ケンイチが出てきたら早送りすべき

結局のところ主人公の清盛(松山ケンイチ)が出てくるシーンは、歴史をよくわかっていない脚本家が書いた「夢」とか「愛」とか空虚で抽象的な物に振り回されるスイーツドラマになってしまっていて、あまり見る価値はないかと思われます。反対に出てこないシーンは歴史ドラマとして流れを維持するための物で、時代考証の先生から「このようにしてください」と書かされている場面でしょうが、それがとても面白いのです。

要は「平清盛」は「主役の松山ケンイチが出てきたら早送りする」と面白く見られるドラマ

だということがわかりました。(それと主題歌は素晴らしいです。)早送りすれば大河1年分でもかなり時短で見ることができますので一石二鳥です。

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大河ドラマ「平清盛」はTSUTAYA DISCAS

大河ドラマ「平清盛」を見ようといろいろ探したのですがNHKはこのドラマの配信をやっていません。他にサービスの同様で結局はDVDを借りるしか手段がないことがわかりました。

こちらのTSUTAYA DISCASは1か月無料ですので無料期間中に頑張って見終えました。