近年、スマホ、テレビともに引っ張りだこだった「液晶ディスプレイ」が姿を消しつつある
その理由は「有機ELディスプレイ」の登場である。ハイスペックのスマホやテレビなどは有機ELに移行しつつある。有機ELディスプレイの登場で小型スマホ向きの液晶メーカーが斜陽産業と言われつつあるがいったいこの「液晶ディスプレイ」と「有機ELディスプレイ」の差は何なのだろうか。
まとめてみたのでスマホやテレビ、パソコンなどのディスプレイが搭載されている製品を購入する際に検討する材料として役にたててほしい。
液晶とは
まず、液晶というのは液体と固体(結晶)の中間の性質を持った相のことである。
通常の分子物性では、ある物質が固体の状態から融点を迎えたとき液体になる過程でその物質の分子はあまり運動しない状態からランダムに動き回る状態に変わるが、液晶となりうる「棒状分子」は違う。
棒状分子は固体から、ある温度で固体から固体と液体の両方の性質を持つ「液晶」という状態に変わりそのあと、さらに熱を加えると液体になる。この「液晶」という状態では分子の向きはランダムではなく揃っている。つまり「液晶」の状態では結晶のような分子の配列の秩序を保ったまま、液体の流動性をもつ状態になる。
さらに、この「液晶」の状態の分子の向きは電圧をかけると分子の並びを変えられる。
液晶ディスプレイとは
液晶ディスプレイは前述した液晶の性質を使っている。この液晶に微細な溝のある板である配向膜を接触させると液晶の分子は棒状なので溝に沿って液晶分子は規則的に並ぶ。
この配向膜を溝の向きを90度変えた板をもう一枚挟むと、液晶分子は90度ねじれて配置する。 光は液晶の分子の並ぶ隙間に沿って通るので、前述した液晶状態の分子の向きは電圧をかけると分子の並びが変えることができる性質を利用し、一方向の波しか通さない膜である偏光フィルムを挟んで電圧をかけることで分子が特定のならびになるようになるので、電圧のかけ具合によって光や色の強弱を出すことができる。
しかし、この液晶ディスプレイの構造だと液晶分子自体は光ることはないため、後ろから光を照らす光源(バックライト)が必要であり、液晶ディスプレイを使っている間は常に後ろから光を照らす必要がある。
有機ELディスプレイとは
有機ELの正式名称は有機エレクトロルミネッセンスと言って、電流を流すと発光する性質の有機物質を使った発光現象のことである。
この有機物質は一つ一つが電圧によって発光し、色や光の強弱も変えられるので有機物質を並べると有機ELディスプレイができる。
有機ELディスプレイでは有機物質一つ一つが発光ダイオードになっていてそれ自体が光っている。
自発光式のためバックライトは必要はなく、有機ELディスプレイをつかっている間は、特定の表示したい分だけの電圧をかけるだけでいい。
液晶ディスプレイと有機ELディスプレイの「差」
液晶ディスプレイが姿を消しつつあるのは有機ELディスプレイの方が優れているからであるが具体的にどのような点で優れているのだろうか。
画質
バックライトが必要な液晶パネルと自発光式の有機ELパネルでは画質からして大きく違うが、最も違うのが「黒色」の表現ではないだろうか。
多彩な色を表示するディスプレイでは色を表現しない色としての「黒色」が濃ければ濃い程他の色が際立ち綺麗なディスプレイに見える。
液晶ディスプレイではバックライトを当て、それを遮り特定の色を出す仕組みになっているので「黒色」を表示したいときは黒色を表示する部分をすべて遮る必要があるが、後ろから光を照らしているため光が漏れるカーテンのように若干の光が入り白がかった黒色になってしまうが、有機ELディスプレイの場合はバックライトが必要ないので黒の部分は光らせていない「無」の黒色なので黒の濃さは液晶とは比にならない。
薄さ
テレビは大きくても家に置くのであまり関係ないかもしれないがスマートフォン等の手に持つ端末はできるだけ「薄くて軽い」のが重要である。
液晶ディスプレイはバックライトを必要とするためどうしてもバックライトを置くスペースを作らなくてはならず薄さに限界があったが有機ELディスプレイは自発光式なのでバックライトのスペースは不要なので液晶ディスプレイの1/10もの薄さを実現することができる。
消費電力
液晶ディスプレイは常にバックライトを使用しているので消費電力が大きいが有機ELディスプレイは特定の電圧をかけるだけなので消費電力が小さい。
まとめ
液晶ディスプレイは構造上どうしてもバックライトが必要という性質があるのであらゆる面で有機ELディスプレイに薄さ、画質などで負けてしまっている。
しかし、液晶パネルは世界中で大量生産されているので安価なディスプレイというポジションでまだまだ現役で活躍するのだろう。